ピラミダルな遠望なればこそ、急登連続の峰 石見冠山(いわみかんざん・863m)

島根県邑智郡邑南町

2007年7月8日(日)     チャコ&門久

 

 

 

 

〈西麓の西野原から石見冠山を見上げる〉

 

 

寒曳山(広島県山県郡北広島町大朝・825.8m)の頂上から北方に

見事にピラミダルな形をした高峰を見たことがある。

居合わせた登山者の方から「あれは石見冠山(かんざん)です」と教えてもらった。

もう5〜6年も前のことだったと思う。

爾来その高峰に登ってみたいと思い続けてきたが、やっと実現させる機会がやってきた。

もう20年も昔には毎夏国道261号線を走って太田まで海水浴に行き、

石見冠山の麓を走り抜けた筈だが、ピラミダルな峰を車窓から眺めた記憶はなかった。

改めて地形図を見てみると、南北に長く、東西には比較的薄い峰で、

周囲の峰からは200m以上抜きん出ているようだ。

これを真南から見ればピラミダルな形になるのであろうが、それ以外の方向からはただの山に見えるといるわけだ。

しかし一度見れば、その美しい姿は忘れ難く、征服欲を持ち続けてきた。

いざ、登ってみよう・・・・!

 

《山行記録》

野原谷登山口9:07・・・・9:18渡渉点・・・・9:34メタセコイア・・・・9:57鞍部(たいのすけ鈩跡地)・・・・9:59水場10:00・・・・10:02鞍部10:08・・・・10:42岩場10:50・・・・11:09主稜線・・・・11:20石見冠山(二等三角点 859.3m)11:21・・・・11:29南峰(863m)11:39・・・・11:45頂上稜線岩場(昼食)12:27・・・・12:29石見冠山(859.3m)12:42・・・・12:52主稜線(下り口)・・・・13:05岩場・・・・13:28鞍部(たいのすけ鈩跡地)13:29・・・・13:48メタセコイア13:49・・・・14:03渡渉点14:06・・・・14:17野原谷登山口

〔総所要時間:5時間10分、昼食・休憩等:1時間26分、正味所要時間:3時間44分〕

 

 9:07 野原谷登山口(標高約250m)

  広島市から山陽・広島・中国・浜田道を通り大朝ICで下り、国道261号線を北上。旧石見町(現邑南町)役場方面へ行く県道7号線との交差点の直ぐ先の宮野原集落で道標に従って国道を離れて右折した。集落の間を複雑に曲折する道であるが、道標が適切に立てられてあるので、それに従って行くと難なく野原谷登山口(国道から2.4km)に到達できた。登山口付近には駐車場、トイレはない。既に登山口近くの道路の膨らみや消防用水の周囲に4台の自動車が停められてあった。我が愛車も道路の膨らみに縦列で停めさせてもらった。(広島からの所要時間:1時間15分)

 

  登山口から約10分間は山裾を巻いて谷間に向かう水平道である。谷間に達して最初の渡渉点を過ぎると、斜度を増しながら谷の奥に向かって登って行く。渡渉点から約15分でメタセコイヤの大木が現われる。何故こんな所にこの樹があるのか?付近の杉や桧と同様に植樹したとしか思えない。付近は見事な羊歯の下生えだ。この羊歯は、この先の鞍部の直ぐ下まで広がっていた。渓流に沿ってまだ暫く登って行くと、やがて登山道は本流を右に外れてその先の支尾根上の鞍部へと向かう。この辺りまで来ると急な滑り易い道だ。最後に虎ロープを頼りに急坂を上り切ると支尾根上の鞍部に出た。

 

 

 

〈野原谷の冠山登山口、山頂まで3kmとある〉

〈最初の渡渉地点まで山裾を巻いて行く〉

 

 

 

 

 

〈最初の渡渉地点、ここから谷間を登ってゆく〉

〈谷間を行くほどに見事な羊歯が現われてくる〉

 

 

 

 

 

〈谷間に一本だけメタセコイヤの大木があった〉

〈谷間を登り切ってもうそろそろ尾根筋の鞍部も近い〉

 

 

 9:57〜10:08 鞍部(たいのすけ鈩跡地)

  この鞍部には杉林の中に猫の額ほどの平地が開けている。中国地方の山に多いタタラ跡(たいのすけ鈩)とのこと。付近に鉄滓が多いと案内板に書いてあったが、そんな物は発見出来なかった。鞍部の直ぐ先は水場で、赴いてみると渓流の流れ水であった。鞍部で進行方向を左手に変えて、今度は支尾根上を直登して行く。雑木林の中のかなりの急坂で、時折虎ロープが張られていた。梅雨の合間の晴れ間独特の蒸し暑さに汗が一気に吹き出してきた。

 

 

 

〈鞍部に立っていた道標〉

〈たいのすけ鈩跡地のある鞍部

 

 

 

 

 

〈鞍部に隣接する水場〉

〈鞍部からは雑木、笹の尾根を直登して行く〉

 

 

10:42〜10:50 岩場

  支尾根の右手谷側に巨岩が露出している。広さは人が10人も上ろうものなら、こぼれ落ちそうな程で、そんなに広いところではない。石見冠山への登山道の中で唯一眺望が開けているのがこの岩場である。最も好眺望なのは石見冠山の頂上付近で、三角点のある頂点と最高峰の南峰の間の吊尾根を眺めることが出来る。下界の眺望は大きな松の樹が立ちはだかって芳しくない。枝越しに旧石見町の中心地方面が望める程度である。岩場を出ると、登山道は暫し支尾根を直登してから、やがて右手にトラバース気味に西斜面を主稜線に向かって登って行く。

 

 

 

 

 

〈岩場付近から石見冠山野頂上部を見上げる〉

 

 

 

〈岩場、登攀路中で唯一眺望が開ける〉

 

 

 

 

 

〈岩場から樹木の枝越しに旧石見町の中心地が望める〉

〈岩場を過ぎてから登山道はトラバース気味に主稜線へと向かう〉

 

 

11:09 主稜線

  主稜線に出ると頂上は近い。ここも雑木林と笹の尾根で、その中に登山道が伸びているが、頂上直下まで来ると、またしても虎ロープの張られた急坂が待っていた。登山道中でここが一番急坂かな?と言う感じである。暫し辛抱して、汗だくで登り続けた。

 

 

 

 

 

〈稜線に上ったところあった道標〉

 

 

 

 

〈笹の急峻な道を登るともう頂上だ!〉

 

 

 

11:20〜12:42 冠山(三角点859.3m、南峰869m)

  急坂を登り切ったところが二等三角点のある石見冠山の頂上であった。この頂上広場では先客の広島市の安佐南区から来た20数名の団体さんが昼食中であった。狭い広場で一部の人は南峰へ向かう登山道にこぼれて座り込んでおられた。もとより我々の座るところはないので、南峰を訪ねることにして、先へ進んだ。南峰から折り返したが、まだ先客が賑やかに談笑中であったので、頂上吊尾根上の岩の上で昼食を摂ることにした。

 

 

 

〈二等三角点(859.3m)のある冠山の頂上〉

〈こちら標高869mの冠山南峰〉

 

 

 

 

 

〈頂上から旧石見町の中心地方面を俯瞰する〉

〈頂上から北東方向を望む〉

 

 

 

 

 

〈その北東方向に見えるのは方角からすれば三瓶山なのだが〉

〈東麓の円ノ板川流域の山地を俯瞰する、山深い所だ!〉

 

 

13:28 鞍部(たいのすけ鈩跡地)

  下山は登った道を引き返した。支尾根の鞍部まで、各所の急坂を時に虎ロープを頼りにして下っていった。鞍部からも最初は虎ロープの掛かった急坂である。そこから更に下って行くと、羊歯の美しい谷間を下って行く道となる。よく観察すると、羊歯の中にある倒木などに分厚く苔生している。梅雨時だけのせいでなく、へいぜいでも湿気の高そうなところだ。

 

 

 

〈鞍部を過ぎて下り行く程に見事な羊歯が現われてくる〉

〈羊歯の中はこの苔、かなり湿気の高い所のようだ〉

 

 

 

 

 

〈メタセコイヤの育つ森〉

〈メタセコイヤ周辺の羊歯が一番立派なようだ!〉

 

 

14:17 野原谷登山口

  シャツなどは絞れるほどの汗だくになって下山。最後の渡渉点で冷水に浸したタオルで顔や手足などを拭くと実に気持ち良かった。帰りの身支度を整えながら、直ぐ近くの集落の様子を眺めてみた。山深いところであるが、綺麗な山里であった。

 

 

 

〈登山口近くの野原谷の集落〉

〈西麓の沢久谷に集落から石見冠山を見上げる〉

 

 

 

〔山行所感〕

  ここまでのこのレポートを読んだチャコ曰く:「この山の大変さが十分に出ていない」。標高差約610mのピストン登山で、ピラミダルな山特有の急坂の上り下りに加えて、梅雨の時期特有の蒸し暑い天気で体力の消耗が激しかった。この蒸し暑さは、真夏のカンカン照りと共に、この辺りの里山登山には最悪の天候だ。この大変さがレポートに十分に出ていないということだろう。

  今回は梅雨時期で頂上部で得られる360度の眺望を満喫出来る環境でなかったのは残念であり、心残りであった。しかし長い間待ち望んだ石見冠山に登頂出来た喜びに浸っているのも事実である。将来もう一度でも登る機会があるならば、その時は眺望の得られる日にしたいと思う。石見の国の美しい景色が展開していることは間違いないようだ。

 

 

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石見冠山の花々

 (2007年7月8日)

 

 

 

 

ドクダミ

(ドクダミ科ドクダミ属)

ヘビイチゴ

(バラ科ヘビイチゴ属)

 

 

 

 

 

ウマノアシガタ(キンポウゲ)

(キンポウゲ科キンポウゲ属)

トチバニンジン

(ウコギ科トチバニンジン属)

 

 

 

 

 

マンネングサ

(ベンケイソウ科キリンソウ属)

ヤマジノホトトギス

(ユリ科ホトトギス属)

 

 

 

 

 

オカトラノオ

(サクラソウ科オカトラノオ属)

アカショウマ

(ユキノシタ科チダケサシ属)

 

 

 

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