紅葉の東稜を辿って登る 石鎚山(1,982m)

愛媛県西条市・上浮穴郡久万高原町

2007年10月22日(月)   門久単独

 

 

 

〈石鎚山・南尖峰の岩壁:ザイルで降りる登山者が見える〉

 

 

石鎚山系にはこのところ毎年通うてはいるものの、

肝心の石鎚山は眺める山となっていた。

10月も下旬の平日にめったにない休みが取れ、その上に快晴との天気予報である。

暖かすぎる異常気象の秋で紅葉前線は二週間も遅れているとの情報だが、

石鎚の高嶺はもう紅葉の時を迎えているだろうと、日帰りの山行を企てた。

単独行ゆえの身軽さから、いつか挙行してみようと考えていた東稜を辿ってみることとした。

《山行記録》

土小屋8:46・・・・9:27休憩所9:29・・・・9:53東稜基部・・・・10:42矢筈岩・・・・10:58小ピーク11:01・・・・11:48南尖峰(1,982m)(昼食)12:38・・・・12:46天狗岳(1,982m)12:52・・・・13:03弥山13:15・・・・13:35二の鎖小屋・・・・14:03東稜基部・・・・14:22休憩所14:24・・・・15:07土小屋

〔総所要時間:6時間21分、昼食・休憩等:1時間15分、正味所要時間:5時間06分〕

 

 8:46 土小屋

  広島を未明の午前3時30分過ぎに発って、山陽道、しまなみ海道を経由して四国へ渡った。今治からは一般道を走って、西条市から国道194号で山中に入った。寒風山トンネルを抜けた高知県いの町一の谷から旧国道を登り返して旧寒風山トンネル入口から瓶ヶ森林道に入って、早朝の瑞々しい紅葉の山肌を見ながら土小屋まで走った。平日とて山上は紅葉の時期ゆえに、土小屋の駐車場はほぼ満車状態。ロータリーに運良く一台分のスペースが空いたのでそこに駐車した。

  天気は快晴、そんなに寒くもない。長袖シャツでちょうど良さそうだった。簡単に身支度を整えて出発。1時間余は二の鎖小屋へと続く一般登山道を辿って行く。

 

 

 

〈登山口の土小屋(標高1,492m)〉

〈鶴ノ子ノ頭の北面を巻く登山道〉

〈遥か東方に瓶ヶ森を望む〉

 

 

 

 

 

〈登山道の先に石鎚山を眺めながら行く〉

〈石鎚山北壁をアップ〉

 

 

 

 

 

〈これから登る東稜を見上げる〉

 

 

 9:53 東稜基部

  標準時間通りの1時間余で東稜の基部に当たる小広場に着いた。土小屋まで3000メートルの標柱があった。この広場の左手の山肌から踏み跡が延びていた。これが石鎚山頂上部の南尖峰まで続く道であった。この踏み跡は暫くは潅木の中を縫って上って行き、やがては熊笹の繁る尾根上に出る。ルートは概して背丈ほどもある熊笹を掻き分けて急坂を登って行く道だ。時折、大きな岩がドンと鎮座しており、それを越えたり、巻いたりといったことを余儀なくされる。

 

 

 

〈東稜への分岐:左手の繁みに東稜への踏み跡が延びている〉

〈稜線から遥か筒上山、手箱山を眺望する〉

 

 

 

 

 

 

 

〈遥か先に南尖峰の岩峰が覗くがまだまだ遠い〉

 

 

 

 

〈熊笹が被さる急坂が続く〉

 

 

 

10:42 矢筈岩

  熊笹を掻き分けての上りに飽きかけた頃に、行く手の右側に尖峰が現れて単調なリズムから解放してくれた。これが地形図に出ている矢筈岩かと思う。尖峰の間から下界の平野部や瀬戸内海(燧灘)が見えて楽しい。ルートはますます険しくなってくるが、相変わらず熊笹の繁る急坂だ。周りは峨々とした岩峰や岩尾根が林立してくる。この辺りが紅葉の盛りのようで、厳しい地形であるが美しい。石門とでも呼べばピッタリの石柱の間を抜け、更に斜度を増した傾斜面を南尖峰の断崖下の岩棚へと登って行った。

 

 

 

 

 

〈これが矢筈岩か。その先には瓶ヶ森が覗く〉

 

 

 

 

〈尖峰の間から道前平野、燧灘を遠望する〉

 

 

 

 

 

 

 

 

〈手前の石門を抜けて南尖峰へと登って行く〉

 

 

 

 

〈急峻な岩の壁が目を奪う〉

 

 

 

 

 

 

〈白骨樹の足下を攀じ登ってその上の岩棚へと向う〉

〈峨々とした岩尾根も紅葉に飾られる〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈岩尾根の先には四国山地の山並みが・・・〉

 

 

 

11:48〜12:38 南尖峰(1,982m)

  東稜基部から1時間20分程かかって南尖峰下のテラス状の尾根上出た。眼前に南尖峰とそこから左に急激に下って行く墓場尾根の岩場が迫っている。狭く切り立った渡り廊下のような細岩尾根を辿って南尖峰の岩場の下まで行った。下から見れば巨大な尖った岩石の林の中のような所だ。ここからほぼ垂直の岩壁をひと登りすれば、石鎚山の頂上部の一角の南尖峰に立てるはずだ。だがなかなか足の置き場、手の掴まり所が定まらない。出来得ればザイルかロープが欲しいところだ。よくよく岩場を観察して、岩の割れ目、窪みを繋いで行くと稜線上まで上がれる目処が立った。南尖峰の頂点に立ったのは、東稜基部を出てから2時間近くも経っていた。

 

 

 

 

 

〈南尖峰のアップ、岩石の林のようだ!〉

 

 

 

 

〈東稜最上部の岩棚から南尖峰へ移動〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈オーバーハングした南尖峰の先端の岩壁〉

 

 

 

  南尖峰の頂点に立てば、見慣れた石鎚山の頂や周辺の峰々を見渡すことが出来た。最高峰の天狗岳の上にも、その先の弥山の上にも沢山の登山者の姿が認められた。特に弥山頂上は平日とはいえ登山者の姿で溢れるほどであった。ここは静かなところで昼食を摂るのが得策と判じて、南尖峰の頂上で徳島から来られた先客の単独行の男性と並んで食事とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈南尖峰から登ってきた東稜を見下ろす〉

 

 

 

 

 

〈南尖峰の先端にはこんな自然の置き土産が・・・〉

〈南尖峰から天狗岳、弥山を見通す〉

 

 

 

 

 

〈石鎚山から西に延び主稜:西ノ冠岳、二ノ森、クラセの頭とつづく〉

(石鎚山の東方、瓶ヶ森から笹ヶ峰に続く主稜の眺望〉

 

 

12:46〜12:52 天狗岳(1,982m)

  南尖峰から先はもう何度も遊んだことのある所である。歩いてみて、ここ何年間でよく整備されているように感じた。一時は荒れ果てて弥山から天狗岳への道も通行止めとされたこともあった。今はそんな心配はない。

 

 

 

 

 

〈南尖峰から見た天狗岳、遠く道前平野が望める〉

 

 

 

 

〈天狗岳から見た南尖峰〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈弥山から見た天狗岳〉

 

 

 

13:03〜13:15 弥山

  弥山頂上はやはり数多の登山者であった。ここまでで満足してゆったりとした時間を過ごしている人達が多い。石鎚神社に参拝し、新しく建った山頂小屋を視察してから下山することにした。下山は一般ルートを辿った。

 

 

 

 

 

〈平日なれど多くの登山者で賑わう弥山山頂〉

 

 

 

 

〈天狗岳の岩場から弥山を望む〉

 

 

 

13:35 二の鎖小屋

  二の鎖小屋下でロープウェイ駅のある成就社への表参道ルートと分かれ、土小屋へのルートを採った。石鎚山の北壁の直下を通るこのルートは落石が多いらしい。特に悪天候の日にはよくよく気を付けないといけないようだ。北壁の下も樹林も紅葉の時を迎えていたが、午後になるとここは日陰となるところ。残念ながら、色合いは今ひとつ、ふたつであった。陽を浴びた石鎚山を見たいなら、土小屋からはどのルートでも午前中に登らねばならない。

 

 

 

 

 

〈二の鎖小屋付近から石鎚北壁を見上げる〉

 

 

 

 

〈北壁下の登山道から矢筈岩を見上げる〉

 

 

 

15:07 土小屋

  下山路は力が抜けたような気分で歩いたが、無事に土小屋に下山出来た。午後3時を少し回っていたが、まだまだ好天が続いていた。帰り支度をしてから、スカイラインのドライブウェイを面河渓方面に少し下って、石鎚山が尖峰に見える南東面を見てきた。

 

 

 

〈下山道から鶴ノ子ノ頭、その先に岩黒山、手箱山、筒上山を望む〉

〈土小屋の下手のスカイラインから石鎚山とその先の主稜を望む〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈快晴、石鎚山の空〉

 

 

 

〔山行所感〕

  幾度も通い慣れた石鎚山であるが、東稜から登るのは初めての体験で、実に新鮮な気持ちでの山行だった。背の高い笹を掻き分けての急坂登りは、楽しいものではないが、高度を増すごとに厳しい表情となる岩峰や岩尾根の姿は楽しい光景だった。頂上直下までさほど危険な箇所はないが、南尖峰への最後の岩壁だけは要注意である。ザイルかロープを用意すれば安心であろう。特に下りに利用するときは必携であると思う。

  石鎚山の南尖峰には、まだ多くの楽しめるところがあるようである。その中でも、墓場尾根の柱状摂理や大砲石などは必見のようだ。紅葉時期には、墓場尾根の露岩、奇岩と色付いた樹々のコントラストあるいはハーモニーが絶妙で、多くの山岳写真家が危険を冒しつつ岩場詣でをやっているようだ。機会があれば、行ってみたいものだ。

  今回何と言っても、素晴らしい天気が山行を楽しいものにした最大の要因であった。山では何にもまして好天が最高のプレゼントである。紅葉は頂上ではもう終っていた感じで、頂上から数十メートル下あたりが丁度良い色合いであった。頂上は週末がベストであったとのこと。ただ今年の紅葉は、何か物足りない。石鎚山の紅葉は、もっと色鮮やかであったように思う。赤と黄色のコンとラストやバランスがあったと思うが、今年は鮮やかな黄色が効いていない。やはり、異常高温が続いているせいであろう。

しかし、平日の好天の下での山行を最高に楽しんだ一日だった。天の神、山の神、家族や、関係者の皆様への感謝の気持ちを忘れないようにしたい。

 

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