県境尾根、台所原は晩秋の趣き 恐羅漢山(1,346.4m)・中川山(1,170.2m)・天杉山(1,173.6m)

広島県山県郡安芸太田町島根県益田市匹見町

2007年11月10日(土)  仁王さん夫妻+増長天さん夫妻+門久

 

 

 

〈青空の下黄色に染められた台所原のブナ林〉

 

 

前々日までの予報では芳しくなかったこの週末の天気であったが、

前日に予報が変わり絶好の秋の行楽日和となった。

西中国山地の峰々の紅葉はもう頂上部では終っている頃と思っていたが、

この晴れ間を利用して、まだこの秋に訪ねていない台所原を中心にして、

恐羅漢山と未踏の台所原から天杉山までの県境尾根を歩いてみることとした。

仁王さん夫妻に増長天さん夫妻も加わって熊も寄り付かないこと確実な賑やかさとなった。

恐羅漢山の稜線はもう枯れ枝が目立つ初冬の佇まいであったが、

台所原に下ってみると、まだ紅(黄)葉の時節に間に合った感じで感動感激の連続だった。

県境尾根に上がってみるとまだ所々に紅葉が残っていてくれた。

もう紅葉は終ってしまったと考えてか訪れる登山者も疎らで、

概して言えば、この山域は晩秋の趣に満ちた静寂の世界となっていた。

 

    《山行記録》

 牛小屋高原9:10・・・・10:01稜線分岐・・・・10:07恐羅漢山(1,346.4m)10:15・・・・10:17台所原方面分岐・・・・11:07台所原・・・・11:42中川山(1,170.2m)11:48・・・・11:52岩倉山分岐・・・・12:22天杉山(1,173.6m)13:17・・・・13:50岩倉山分岐・・・・13:52中川山(1,170.2m)13:53・・・・14:13台所原・・・・14:22中の甲林道終点・・・・14:54管理林道終点・・・・15:06稜線分岐・・・・15:18夏焼峠・・・・15:43牛小屋高原

〔総所要時間:6時間33分、昼食・休憩等:1時間10分、正味所要時間:5時間23分〕

 

 

 9:10 牛小屋高原

  牛小屋高原エコキャンプ場入口前の大駐車場に自動車を停めた。ボランティアの手でよく管理された綺麗なトイレもある。今回は久し振りに立山尾根ルートを辿って先ずは恐羅漢山に登ることにした。スキー場の中の急坂を一気に登った。スキー場の上部では樹々はもう葉を落として初冬の佇まいであった。約50分で稜線に出て夏焼峠からの尾根道に合流し、落葉した潅木の中の道を辿ると直ぐに頂上に到達した。

 

 

 

〈登山口の牛小屋高原〉

〈立山尾根コースは先ずスキー場を登り始める〉

 

 

 

 

 

〈梢が裸になって初冬の佇まいが感じられる〉

〈枯葉色の砥石郷山(手前)とその先の臥龍山〉

 

 

 

 

 

〈稜線上の分岐まで来ると、恐羅漢山頂上はもう直ぐだ!〉

〈稜線上の登山道〉

 

 

10:07〜10:15 恐羅漢山(1,346.4m)

  いつもは多くの登山者の姿のある頂上であるが、この日は我々以外に登山者の姿はなかった。登山口の大駐車場も閑散としていたのも、もう山上の紅葉は終ったとしてのことであろうか?好天の下であったが、遠くの山々は霞んでいた。写真などを撮ってから、先はまだ長いと早々に発って台所原へと急いだ。

 

 

 

〈恐羅漢山頂上の標識〉

〈頂上の三等三角点、広島県島根県の最高地点だ!〉

 

 

 

 

 

〈頂上から眺めたスキー場の対面の内黒峠のある尾根筋〉

 

 

10:09 台所原方面分岐

  稜線から台所原への下り始めは稜線部と同じく樹々も葉を落として寂しい世界であったが、下るほどに樹々に葉が残ってきて、やがては見事な紅葉の森となった。紅葉は去ったと諦めていただけに感動も大きかった。この黄色、この錦の彩りが呼び覚ます心の喜びは、何と名付けたらいいのだろうか?写真をパチリ、パチリと撮っていたら、稜線から台所原まで予定の倍の時間を要してしまった。台所原に下り切ったところで、5人組の登山者に会った。今日山中で会った初めての人たちであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈稜線直下の落葉したブナ林〉

〈稜線直下では葉も疎らで県境尾根が望める〉

 

 

 

 

 

〈下るほどに見事な紅葉の森と変貌してゆく〉

〈期待していたブナの紅(黄)葉だ!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈青空の下、ブナの黄色が映える〉

〈黄色の傘を差したブナの大木〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈台所原は将に錦秋の森だ〉

 

 

 

 

 

 

〈これだけの色合いに包まれると感動ものだ!〉

〈見上げても錦の彩りだ!〉

 

 

11:07 台所原

  台所原まで下り、森の番人のミズナラの老木に挨拶をして、その足元の分岐を県境尾根方面への道を採った。ここでキノコ採りの3人のグループに出会った。この先天杉山までは初めて通る道である。暫し倒木の多い深い笹の中の急坂を尾根上まで上った。尾根上に上がると、あとは緩やかな道が続くかと期待していたが、中川山のピークが遥か先に高々と見えており、そのピークに向かって直登する道が続いていた。標高差170メートルほどを一気に登るようで、ここは汗を掻いた。中川山への稜線は台所原のブナから変わってミズナラの美林で覆われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈台所原の番人の大ミズナラ〉

〈台所原から県境尾根への急坂〉

 

 

 

 

 

〈登山道から登り行く中川山の稜線を望む〉

〈中川山への登山道は素晴らしいミズナラの森を行く〉

 

 

11:42〜11:48 中川山(1,170.2m)

  2万5千の地形図に中川山という山名の記載はない。三角点と標高の記載があるだけである。桑原良敏著「西中国山地」によれば、「なかのごうやま」と読むのが正解のようだ。縦走路の中央部に小さな四等三角点が草に隠れるように埋められているだけで、頂上広場があるでもなく極めて散文的な頂上であった。その頂上で暫し休憩を取って天杉山を目指した。5分もしないうちに左手に三の滝林道の鳥越峠、その先の岩倉山方面へ伸びる道が分岐していた。天杉山への縦走路は綺麗に熊笹が刈り払われた見事な尾根道で、天杉山まで緩やかな起伏があるだけの気持ちの良い道であった。

 

 

 

〈中川山の山頂、縦走路が通るだけの散文的なところである〉

〈この四等三角点があるのでかろうじて頂上と分かる〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈熊笹を切り開いた気持ちの良い道が天杉山へと続く〉

 

 

 

 

 

 

〈だいぶ葉を落とした樹林の先に天杉山のシルエットが浮かぶ〉

〈縦走路の右前方に天狗石山が望めた〉

 

 

12:22〜13:17 天杉山(1,173.6m)

  今年6月30日以来の天杉山(あますぎやま)であった。頂上広場では三の沢を上ってきたという単独行の男性が昼食中であった。頂上広場に立てられてあった趣のある浜田山の会が設置した山名を刻した指導標がなくなっていた。頂上広場の端の笹原を切り開いた展望所から辛うじて聖山と深入山が見える以外には、この頂上から眺望はない。

 

 

 

〈天杉山の頂上広場〉

〈こちらには三等三角点が埋め込まれている〉

 

 

 

 

 

〈頂上から辛うじて聖山が望める〉

〈樹々の先には深入山のシルエットが見える〉

 

 

頂上広場でゆっくりと昼食を摂りながら下山ルートを相談し、来た道を台所原へ引き返すことにした。出来得れば薮漕ぎになるのではあろうが、天杉山辺りから中の甲へ下りたかったのだが・・・。先客の単独行の男性の話しでは、天杉山と野田原の頭の間の鞍部から中の甲林道に下る踏み跡があるが、中ほどでテープも消えて簡単に歩ける状態ではないという。天杉山と中の甲林道の間の標高差200メートルほどを結ぶ道を開くことが出来れば、広島県側からこの山域に簡単に入ることが出来、多様なルートが開発できるのであるが、残念なことである。

 

 

 

 

〈ミズナラの林の先には霧がたち始めた恐羅漢山を望む〉

〈秋の彩りの残る尾根筋の樹林の中を下山する〉

 

 

14:13 台所原

  県境尾根を引き返して再び台所原に下り立った。天杉山にいた頃から空模様は急速に下り坂となり、台所原に下った頃には恐羅漢山までも霧の中に隠れてしまっていた。森の番人のミズナラの足元の分岐を左に取って、中の甲林道の方向へと進んだ。

 

 

 

〈台所原から見上げる恐羅漢山は霧に隠れてしまっていた〉

〈台所原に下ると樹々の色合が美しい〉

 

 

14:22 中の甲林道終点

  中の甲林道終点の広場周辺で、この日この山域で会った5人組の登山者、キノコ採りの3人組という2グループの人たちに再び出会った。登山者グループは四駆で林道を辿って帰路に就くところであった。キノコ採りのグループはノンビリとお茶の時間という雰囲気であった。広場から夏焼峠へ向けて管理林道を辿って行った。中の甲林道の通る谷の紅葉を期待していたものの、下り坂の天気で霧が巻き眺望など望みようがなかった。

 

 

 

〈中の甲林道の終点の広場〉

〈紅葉した樹の向こうには霧の幕がかかった中川山が望める〉

 

 

 

 

 

〈管理林道を夏山峠へと向かう〉

〈天杉山の頂上部も霧の中に隠れてしまった〉

 

 

14:54 管理林道終点

  管理林道の終点から樹林の中に入り恐羅漢山の主稜線上まで山道を辿った。この間約15分かかった。恐羅漢山頂上と夏焼峠を結ぶ主稜線上の尾根道に出て、熊笹の中に見事に整備された道を夏焼峠へと向かった。  

 

 

 

〈管理林道終点から暫し森の中を稜線まで上る〉

〈恐羅漢山と夏焼峠結ぶ主稜線上に出る〉

 

 

 

 

 

〈主稜線上で振り返ると恐羅漢山々頂は霧の中であった〉

〈夏焼峠への主稜線上の登山道〉

 

 

15:18 夏焼峠(なつやけのキビレ)

  夏焼峠まで下って来ると、長かったこの日の山行ももう直ぐ成就となる。一種の安堵感と達成感の入り混じった高揚感を胸に登山道を歩んで行く。これも心軽やかな、また心楽しい山での時空である。

 

 

 

〈夏焼峠に立つ指導標〉

〈牛小屋高原への登山道の脇を真っ赤に彩る〉

 

 

15:43 牛小屋高原

  6時間半に及ぶ長い山行を無事終えて登山口の牛小屋高原に下山した。朝登り始める頃には青空の下で、きれいに見えていた恐羅漢山の頂上部は完全に霧の中に隠れていた。この天候の急変は冷気を伴った低気圧の接近によるもので、やがてはこの地に多くの雪をもたらす気象の前触れなのであろう。

 

 

 

〈頂上部が霧に隠れた恐羅漢スキー場カヤバタゲレンデ〉

〈牛小屋高原の登山口に無事下山〉

 

 

〔山行所感〕

  台所原というところは、どの季節に訪ねても必ず感動を与えてくれる所だ。今回はブナを中心にした素晴らしい紅葉ならぬ黄葉が忘れ得ぬ錦秋の絵巻を現出してくれた。多分黄葉のピークからは1週間か10日程遅かったのであろうが、またそれはそれでこの時節が故の色合いを見せてくれたのだと思う。

  県境尾根を歩く本来の狙いは、台所原から高岳への完全縦走にあるのだが、今回はその下見をも目的にしていた。今年6月に歩いた奥匹見峡ルート分岐〜天杉山の区間と同様に、今回の台所原〜天杉山の間も見事に登山道が整備されていた。登山道はもういつでも完全縦走にチャレンジして下さいと言わんがばかりである。来春の日が長くなる頃までには何とか成就したいものである。

 

 

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