紅葉美しい「引き明けの森」を抜けて 天上山(972.6m)

広島県山県郡安芸大田町・広島市佐伯区湯来町

2007年11月18日(日)    門久単独

 

 

 

 

〈引き明けの森を紅く彩る〉

 

 

木枯らしが吹き山には雪が舞うことも・・・という予報の日曜日になった。

こんな悪天の予報下であったが、

もう天上山々麓の「引き明けの森」辺りに紅葉前線が下ってきているだろうと考えて思い切って出掛けてみた。

「引き明けの森」  大好きな森である。

樹齢数百年の巨木、古木が林立し護り続けられている森。

この森の中に入ると、いつも幼子が母に抱かれたような安堵感に浸れる。

この森に到達するためには険阻な龍頭峡の断崖に付けられた登山道を小一時間登って行かねばならない。

辿り着いたその森は、将に紅葉の真っ盛りの時季を迎えていた。

悪天の予報の精もあってか、この日この山域に入っているのは私一人だけのようで、

素晴らしい古木と紅葉の森を独り占めすることとなった。

そして、冷たい強風の吹く天上山山頂からは雪に埋まるのも間近な西中国山地の主峰群を仰いだ。

 

《山行記録》

 龍頭峡駐車場10:26・・・・10:32龍頭橋(登山口)10:33・・・・11:05最初の堰堤下・・・・11:15二番目の堰堤下・・・・11:28「引き明けの森」の標柱・・・・11:40栃の古木11:42・・・・11:44分岐(左へ)・・・・12:09合流点・・・・12:14引き明けの森入口(林道)12:16・・・・12:49天上山(972.6m)(昼食)13:38・・・・14:01林道(引き明けの森入口・標高780m)・・・・14:11分岐(左へ)・・・・14:23合流点・・・・14:24栃の古木14:26・・・・14:34「引き明けの森」の標柱・・・・14:38ささやき滝・・・・14:45二番目の堰堤下・・・・14:52最初の堰堤下・・・・15:30登山口(龍頭橋)・・・・15:32ナメラ滝・・・・15:36二段滝15:37・・・・15:40奥の滝15:48・・・・15:50滝見広場15:53・・・・15:59龍頭橋・・・・16:05龍頭峡駐車場

〔総所要時間:5時間39分、昼食・休憩等:1時間08分、正味所要時間:4時間31分〕

 

 

10:26  龍頭峡駐車場

  広島の自宅をのんびりと出た上に、山麓の筒賀の大歳神社の大イチョウを見に立ち寄ったこともあって登り始めるのが遅くなってしまった。心配していた天気は何とか持っていて時折青空も見える状況で、安心して登り始めることが出来た。龍頭峡には数組の渓谷散策や滝見物の人たちの姿があった。

 

 

 

〈筒賀の大歳神社の大イチョウ〉

〈龍頭峡駐車場から天上山登山口へ向かう〉

 

 

10:32  登山口(龍頭橋)

  登山口は龍頭峡の奥まったところ、三谷川に架かる龍頭橋を渡った地点にある。ここから川床に下り渡渉すると登山道が始まっている。登山道は直ぐに断崖に施設された急坂となり、そこを10分ほどで登り切ると今度は断崖の中程を巻くように谷の奥へ入ってゆく水平道となる。時折現れる朽ちかけた木橋や金属製の梯子が危なっかしい。谷の奥の川床まで到達すると、二つの砂防堰堤の下を渡渉する。二つ目の堰堤の上流部は流れが滝となって落ちる険阻な地形となり、いくつもの梯子が掛かった断崖の中の道を登って行く。

 

 

 

 

〈龍頭橋詰の天上山登山口〉

〈登山道から見た龍頭峡〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈険しい岩壁も多い龍頭峡〉

〈木洩れ日差す登山道を行く〉

 

 

 

 

 

 

〈砂防堰堤の続く谷筋を登って行く〉

 

 

11:28  「引き明けの森」標柱

  険阻な断崖状の道を登り切ると、待望の「引き明けの森」だ。「大谷引明天上山自然林・引き明けの森」と刻された標柱のある辺りから杉や栂の古木の針葉樹林となる。針葉樹も巨木となってくると人を癒す力を持つ。この針葉樹の林を歩くのも好きだ。その森を抜けると潅木の多い谷筋に出る。そこにこの引き明けの森の主とも言える栃の古木が立っている。幾重もの鱗状の節くれだった表皮や宿りの小植物を載せた枝振りなどはいかにも森も盟主と呼ぶに相応しい容貌である。一声「また来ましたよ、元気でしたか!」と声を掛けたくなるから不思議だ。

 

 

 

〈この標柱にある辺りから「引き明けの森」が始まる〉

〈天を指して伸びる針葉樹の森〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈巨木の森は癒しの場でもある〉

〈森の盟主の大栃〉

 

 

 

  栃の古木を過ぎて直ぐに登山道は二つに分かれ谷から離れて高度を上げて行く。どちらを通っても栂や樅、松といった針葉樹に楢や楓の広葉樹の混じった森を抜けて天上山への登山道が始まる標高780メートルの林道に出る。この広葉樹が今を盛りに紅葉して美しい。ここの森の紅葉の特色は、黄色系を中心に色付いた広葉樹と針葉樹の大木のコラボレーションにある。これが林道までの間ずっと続くので、歩いていて大変に楽しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈高度を上げて行くと色付いた広葉樹が多くなる〉

〈この黄緑色には目が覚める想いであった〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈針葉樹の大木と紅葉のコラボ〉

〈真っ直ぐの大幹を紅葉が彩る〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈広葉樹の黄色と緑の針葉樹のハーモニー〉

〈今が盛りの引き明けの森の紅葉〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈色付いた樹々の先に天上山の山体が覗く〉

〈気持ち良い秋色の森の中に登山道が続く〉

 

 

 

 

 

〈歩いていて実に楽しい道だ〉

〈登山道を飾るモミジの落葉〉

 

 

12:14〜12:16  林道

  森を抜けて林道に飛び出ると様相は一変する。林道には枯れた落ち葉が積もっており、これから先に自動車が数多走った形跡はなかった。やや井仁の棚田へ寄ったところに天上山への登山道の取り付きがある。ここから上はほぼ杉や桧の植林で、その林の中に急坂が上へ上へと伸びている。下生えの潅木が黄色く色付いて暗い林の中を明るくしている感じだ。長い急坂を登り切ると、頂上部までの稜線上の水平道となる。潅木に囲まれて眺望はなかなか得られないが、潅木越しに大峯山の大きな山体や遠く吉和冠山などが眺められた。

 

 

 

〈色付いたモミジの下を潜り抜けると林道に飛び出る〉

〈林道から天上山への登山道の取付き〉

 

 

 

 

 

〈下生えの潅木が黄色に色付いた杉・桧林を登り行く〉

〈ウリハダカエデの落葉散る木洩れ日の道〉

 

 

 

 

 

〈頂上直下の稜線の水平道を行く〉

〈潅木の間から大峯山の大きな山容が望めた〉

 

 

12:49〜13:38  天上山(972.6m)

   龍頭峡から2時間20分ほどの時間をかけて天上山の山頂に到達した。時間がややかかり過ぎであるが、そこは引き明けの森の美しさ故のことで、今日だけは仕方がない。頂上には狭いながらも頂上広場があり、二等三角点が埋められている。周囲は杉や潅木に囲まれているが、西側だけ樹木が切り払われており、内黒峠から恐羅漢山、十方山などが眺望出来た。悪天候の予報通りに、頂上には寒風が吹き荒んでおり非常に寒かったが、ここでやや遅い昼食をこれまたゆっくりと摂った。食後は一気に林道まで下った。

 

 

 

〈二等三角点のある天上山々頂広場〉

〈遥か十方山、恐羅漢山を望む〉

 

 

 

 

 

〈樹間から市間山方面を覗く〉

〈遥か内黒山の山塊が望める〉

 

 

14:01  林道

  林道は「打ち明けの森」への上方の入口でもある。森の中の登山道に入ると、再び錦秋の森の中とあいなる。直ぐに午前中に登って来た道と東側の尾根筋を下る道との分岐となるが、ここは新しい尾根筋の道を採った。急激に大栃の樹のある谷に下って行く道であるが、この沿道も紅葉も美しい。樹々の色合いを楽しみながら、写真を撮りながら下って行った。谷筋に下って大栃の樹にも別れを告げ、再び針葉樹林へと返って行った。

 

 

 

〈再び「引き明けの森」を下って行く〉

〈古木を彩る紅葉の森〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈午後の日差しを浴びた広葉樹の森〉

〈これぞ錦秋!〉

 

 

 

 

 

 

〈いつまでも見ていたい程の鮮やかさだった!〉

 

 

 

 

 

〈今が佳境という感じの紅葉〉

 

 

 

 

 

〈そして、針葉樹の森へ・・・〉

〈杉と栂の饗宴〉

 

 

14:34  「引き明けの森」標柱

  引き明けの森を抜けると、断崖状の急坂を下って行き、二つの堰堤を通過した後に谷筋から渓谷の崖の中ほどのやや危弱な巻き道へと移った。足元に注意し、転倒だけはしないように気をつけて下って行った。

 

 

 

〈険阻な龍頭峡の山々を眺めながら下山〉

〈杉林の緑と黄葉のコントラストが見事だ〉

 

 

15:30  登山口(龍頭橋)

   ほぼ5時間の山歩きを終えて龍頭峡に下ってきた。まだ日没まで十分な時間があったので、龍頭橋詰を左折して龍頭峡の滝見物をすることにした。

 

15:40〜15:48  奥の滝

  ナメラ滝、二段滝それに奥の滝の三つの滝を見たが、どの滝も水量が極めて貧弱だった。ここのところ山に雨が少なく渇水状態なのだ。先週末に立ち寄った深入山の山麓の深命水は、あれほど豊かな水量があったのに夕刻になって枯れ果てていた。この地域の何処も同じであるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈二段滝〉

〈奥の滝〉

 

 

 

16:05  龍頭峡駐車場

  5時間30分余の山行を無事に終えて下山した。帰路に龍頭峡の霊水を頂戴した。午前中混み合っていた水汲み場であったが、夕刻となって人影も疎らとなって落ち着いて汲めた。

 

〔山行所感〕

大好きな引き明けの森が期待通りに紅葉していて、やや寒い天候とはなったものの、最高の山行となった。ここの森の紅葉は派手さはないが、自然そのものの広葉樹が素直に色付き、それが針葉樹の大木、巨木の眺めと巧く調和して最高の光景を現出してくれている。訪れる人が少なく、美しく化粧する森が気の毒に思えるほどである。別の言葉で言えば、隠れた紅葉の名所ということだ。引き明けの森は、今回も大いなる憩い、癒しを与えてくれた。ただ静かな山中ゆえ、熊への備えが必要なのは当然であります。

 

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