安佐・小河内の山境の縦走 牛頭山(689m)・鼻神山(580.9m)・本串山(572.8m)

広島市安佐北区安佐町

2007年12月1日    仁王さん夫妻+門久

 

 

 

 

〈牛頭山々頂から南方向の眺望〉

 

 

広島県内にも何箇所か縦走してみたいところがある。

長い間心の内で温めてはいるが踏破する機会に恵まれないルートである。

今回はそんな縦走路の一つを実際に歩いてみることとなった。

広島市北郊の安佐北区安佐町の野外活動センターから布(ぬの)までの間を

牛頭山(西峰689m、東峰672.6m)、鼻神山(580.9m)、本串山(572.8m)を辿って行くルートである。

牛頭山や本串山については多くの情報があるが、

中央部の鼻神山周辺についてはあまり情報がない。

果たして如何なる山行になったのであろうか・・・!

 

《山行記録》

野外生活センター9:21・・・・9:28登山口9:29・・・・9:50鞍部9:52・・・・10:04牛頭山・西峰(689m)10:28・・・・10:38鞍部10:43・・・・10:53牛頭山・東峰(672.6m)10:57・・・・11:10ピーク・・・・11:35鞍部・・・・11:50鼻神山(580.9m)12:20・・・・12:46中電巡回路に出る・・・・12:47 鉄塔(71号)・・・・12:56鞍部・・・・13:09鉄塔(72号)・・・・13:17鉄塔(73号)・・・・13:18本串山(572.8m)13:28・・・・13:35鉄塔(74号)13:37・・・・13:58鉄塔(75号)14:01・・・・14:20鉄塔(76号)14:24・・・・14:36鉄塔(77号)14:37・・・・14:54旧布駅

〔総所要時間:5時間33分、昼食・休憩等:1時間26分、正味所要時間:4時間07分〕

 

 

9:21 野外活動センター

  牛頭山東麓の野外活動センター最上部の牧場前にある駐車場に自動車を停めて登山開始である。トイレもあって絶好の登山口だ。ここへ来る前に、下山口の廃線となった旧可部線布駅にもう一台自動車を配しておいた。牧場脇から登山道が始まり、この道を採るのが一般的であるものの、この日はその山道から入山せず、そこから山裾を巻く車道を暫く歩いて最奥の一軒家の先から山に入る道を採った。山道に入ると直ぐに右側から牧場脇からの登山道が合わさる。登山道は細い谷筋を上って行くが、直ぐにロープを張った急坂となる。ここは尋常ではない傾斜面を登る道だ。その上にその道がかなり荒れており、滑らずに前へ、上へ進んで行くのが難しいような状態の所もある。とても、小学生などの学童がハイキングを楽しめる環境ではない。それでも一軒家から20分ほどで牛頭山の西峰と東峰の間の鞍部に着いた。

 

 

 

〈登山口の野外活動センターから牛頭山西峰を見上げる〉

〈野外活動センターの羊牧場〉

 

 

 

 

 

〈最奥の民家の先から登山道が始まる〉

〈桧林の中の急坂が始まる〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈桧林の下生えは黄葉の盛りだ!〉

 

 

 

 

〈ロープが張られた急坂が続く・・・〉

 

 

9:50〜9:52 鞍部

  牛頭山の西峰と東峰の間の鞍部から今回の縦走路中の最高点である西峰山頂との間をピストンする。ここは鞍部にザックをデポして、身軽になって歩くに限る。桧の植林地と自然林の間の尾根道を登って行く。時に岩が露出した所もあり、足元に気を付けて足を運んだ。かつての山城址である尾根筋には、第5までの郭跡が残っている。

 

 

 

〈まだ幾分紅葉の残った東西牛頭山の間の鞍部付近〉

〈左桧林、右自然林の尾根を西峰山頂へ向う〉

 

 

10:04〜10:28 牛頭山・西峰(689m)

  鞍部から10分間程の上りで牛頭山の最高点である西峰の頂上に着いた。ここは四周の好眺望で名高いところである。好天を期待していたのだが、曇勝ちで西中国山地方面は灰色の雲に閉ざされていた。雪雲かも知れなかった。それでも南から東方向は、瀬戸内海から豊平の高原まで遠眺することが出来た。時折雲の切れ間から陽が射すと、未だ紅葉の残る山々が輝いて見えた。好眺望に浸っていると、20数分が瞬く間に過ぎてしまった感じであった。

 

 

 

〈西方の霧の棚引く太田川の渓谷上には天上山が聳える〉

〈目を南に転ずれば、宮島や五日市の北方の峰々が遠望出来る〉

 

 

 

 

 

〈真南方向には遥か広島市街地の先に絵下山まで望める〉

〈東方向には広々とした豊平の高原が広がる〉

 

 

 

 

 

〈稲藁を燃やす煙であろうか・・・、今では珍しくなった初冬の風物〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈これから辿って行く本串山への尾根筋を望む〉

 

 

 

 

 

〈幾重にも重なる里山の山並み〉

 

 

10:53〜10:57 牛頭山・東峰(672.6m)

  西峰山頂から一旦鞍部に下ってザックを拾うと共に、小雨模様となったので身支度も整えていよいよ縦走路を進むことに。先ずは10分間ほどの急坂を登って東峰の頂上へ。牛頭山の三角点は標高は低いもののこちらの方にある。頂上の樹に貼り付けられてあった地図には、こちらの東峰は「飯室牛頭山」、最高峰の西峰は「小河内牛頭山」と記されていた。こちらの方が分かり易い。

 

 

 

 

 

 

〈牛頭山の三等三角点>

 

 

 

 

 

〈枯葉が積もった急坂を東峰に向う〉

 

 

 

  牛頭山東峰まではガイドブックにもよく紹介されて登る人も多いが、これから先は情報の少ないところだ。我々もこれから先は初めてである。東峰頂上から尾根伝いに南に道が伸びている。道は直ぐに左に曲がると素晴らしい桧林の中を一旦下り、再び上り返す。東峰から約10分後に一つのピークを越えて長い尾根の下りに入った。時折低い笹が被さる所はあるが、踏み跡は明瞭で迷うことはない。鼻神山との間の鞍部まで標高差150メートルは下る。鞍部の手前は長い緩斜面で紅葉も見ることが出来て気持ちの良い歩きが楽しめた。

  鞍部から鼻神山への上りに取り掛かると状況は一変する。鞍部から南斜面を巻く踏み跡があったのでそこに踏み込んだ。薄い踏み跡は続いていたものの背丈より深い笹薮の中に突っ込んできついアルバイトとなった。何とか尾根上まで上がってみると、尾根筋の笹原の中にも踏み跡があった。鞍部から南(左)に巻かず、尾根筋を素直に辿ればよかったのだ。尾根筋の笹は雨に濡れておりズボンを汚した。

 

 

 

〈眺望の利かない尾根筋、紅葉が心を和ませる〉

笹薮の中のきついアルバイトで鼻神山へと向う〉

 

 

11:50〜12:20 鼻神山(580.9m)

  地形図に580.9メートルの三角点の表示があるところが鼻神山だ。この山名は、この山中の所々に野外活動センターが張り出している地図に記されていることから知った。たぶん「はながみやま」と読むのであろう。手前の鞍部から笹を分けて15分間程登ったミズナラを中心とした林の中の緩やかなピークで、四等三角点があったので辛うじて頂上と確認できた。正午近くであったので、ここで昼食を摂ることにした。頂上広場とてないところであるが、道路を塞いで座り込んでも他に登山者が来る心配はまずなかった。

 

 

 

〈鼻神山の四等三角点〉

〈鼻神山の山頂、笹と雑木の林の中だ〉

 

 

 鼻神山山頂での昼食を終える頃になって、本格的な雨となってしまった。慌てるように荷物を仕舞い込み、雨具を身に付けた。頂上から暫くは潅木の尾根上の細道を辿ったが、やがて急な下り坂が待っていた。ここも急な尾根筋を標高差で150メートル以上下らねばならない。ここで厄介だったのは、枯葉が堆く積もった急坂の地面は相撲の土俵のように固くツルンツルンの粘土質で、そこを下って行くと滑り落ちそうでとても安心して歩ける道ではなかったことである。それも潅木の中を縫うように下る細道である。ここを用心しながら下るのは、ここまでの中で最大の労苦であった。

 

 

 

 

 

 

〈滑り易いブッシュの中から中国電力の巡回路に飛び出た>

 

 

 

 

 

〈この枯葉の下には滑る地面が牙を隠す〉

 

 

 

  天や山の神はいつまでも労苦を課せるばかりではなかった。鼻神山の山頂から25分間程下って来て、もう難路に疲れて飽きかけていた頃に突然に草や潅木の刈り払われた広い登山道に飛び出た。それまでの難路から見れば、もう高速道路だ。どうも電力会社の送電線鉄塔の巡回、補修用の道路のようだ。これから行く本串山は地形図でもずっと送電線が通っているので、これからはこの高速道を行けば良いのかと考えるのは楽しいことであった。ただ反対方向から来た場合、この巡回路から鼻神山頂上への尾根道の取り付き場所は、極めて分かり辛い。道路状況の落差が大き過ぎて、尾根道への取り付きは単なるブッシュとしか見えないのだ。ビニールテープが巻かれた樹もあるにはあるが、果たして本串山方面から来た登山者が目敏くそれを発見出来るであろうか。かなりの注意力が要求される。

  中国電力の巡回路に出て直ぐに送電線鉄塔(71号)があった。そこから更に下りると鞍部に出た。尾根の北側の谷あいの右平方面からよく踏まれた道が上がってきていた。この鞍部からはまた150メートル以上の標高差を登らなければならなかったが、今度はきちんと整備された道ゆえに、難なく20分間ほどで本串山へと辿り着くことが出来た。

 

 

 

〈中国電力の71号鉄塔下を行く〉

〈電力会社の鉄塔の標識が立つ鼻神山と本串山の間の鞍部〉

 

 

 

 

 

〈よく整備された鉄塔巡回路を本串山へ向かう〉

 

 

13:18〜13:28 本串山(572.8m)

  本串山は巨大な73号送電線鉄塔の建つ山上の杉林の中にあった。よく手入れされた立派な杉林だ。この山上に佇んでいると、俄かに天気が好天して青空まで見え出した。猫の目のような天気の変化である。これでこの日は3つの三角点を踏んだことになる。よくぞここまで来たものだ。

 

 

 

〈本串山山頂の三等三角点〉

〈本串山山頂は杉林の中、隣には大きな送電線鉄塔が建つ〉

 

 

 あとは下山するだけである。しかしことは簡単ではなかった。地形的にも本串山は東西に長い山体である。その山体の上をほぼ真西に向かって送電線が延びており、登山道を兼ねている巡回路もそれに沿って真西に延びている。その道は、地形よりも送電線の位置に素直に従っており、一旦深い谷の底まで大きく下ってから、鉄塔の建つ尾根の上に登り返すことを何度か繰り返した。この山塊の西側の急斜面に建つ77号鉄塔まで西下してきた道は、それ以上は険し過ぎて下れないと、進路を南にとって山塊の南斜面を巻くようにして布の集落に向かって下って行った。この道がまた危険であった。分厚い落ち葉の下は、ゴロゴロした岩が転がり、その道の右手は滑り出したら止まりそうもない急傾斜面。見えない岩に乗って転びはしないかと用心しながら下って行くのは芯から疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈長い杉林の中のルートを下山する〉

〈下山ルート上にある74号鉄塔〉

 

 

 

 

 

〈75号鉄塔を見上げる、下山路は鉄塔巡りの感も!〉

〈黄色に彩られた登山道を急ぐ〉

 

 

 

 

 

〈76号鉄塔、紅葉した樹々や山々が美しい〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈77号鉄塔から送電線は大田川の渓谷を越えて隣の久地冠山へ〉

 

 

 

 

〈枯葉がゴロタ石を隠して危険な登山道〉

 

 

14:54 旧可部線布駅

  本串山の山頂から1時間半近い時間を掛けて下山した。下山した地点は旧可部線布駅の直ぐ三段峡寄りの集落の中。本串山登山口らしい何の道標もない。下山した所で三人のご婦人が井戸端会議中であったが、ちょっと怪訝な顔をされてしまった。後で「山へ上がっていたんねぇ!」と声は掛けてくれたが・・・。あまり、こちらから本串山へ登る登山者も多くない感じである。下山地点から朝方自動車を停めた布駅跡は目と鼻の先であった。

 

 

 

〈下山地点から本串山を仰ぐ〉

〈下山道を真っ直ぐ下ると民家の間のこの小路へ出てきた〉

 

 

 

 

 

〈今は忘れられた旧布駅〉

 

 

〔山行所感〕

総所要時間5時間半の縦走であった。情報がないだけにやはり真ん中辺りの鼻神山の登り下りが厳しかった。素晴らしい眺望の小河内牛頭山(西峰と呼ぶよりこちらの方がやはり分かり易いかな?)から一転しての眺望のない長い尾根歩き、樹林帯歩きは時間が長くなるほどに登山者を鬱にさせる。ましてや悪天候の下の悪路であれば尚のことである。今後再びこのルートを辿るのは、近場で静かな山歩きをしたいと切に願う時であろう。右平の集落を訪ねてみるなどのオルタナティブなルートを設定してみると楽しいかも知れない。移ろい易い天候の初冬の一日が仁王さん夫妻も含め充実した日となったのは間違いないところである。

 

〔BACK〕

〔HOME〕

 

inserted by FC2 system